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神奈川工科大学 基礎・教養教育センター  物理 准教授
神谷 克政 (Katsumasa Kamiya)

 私は、これまで物理・生物・化学・ナノテクノロジー分野におけるナノメートル・スケールの自然現象を、国内外の異分野の研究者と共同で研究してきました

 ナノスケールの自然現象では、電子の波動性が顕在化する為、ナノ物質の構造が電子状態を変調し、その結果としてナノ物質特有の機能が発現します  

 筑波大学大学院の計算物理学専攻の博士課程において、生物分野におけるナノスケールの生命現象を研究しました。生命活動を担う蛋白質中における電子の挙動は、蛋白質の原子レベルの構造変化の影響を強く受け、その相互作用の結果として蛋白質の生理的な機能が発現します。その最も重要な例として、細胞呼吸を担う蛋白質であるチトクロム酸化酵素があります。この酵素は、呼吸で取り入れた酸素分子を還元反応する事で水素イオンを輸送する機能を持ちますが、原子レベルの水素イオン輸送機構は解明されていませんでした。私は、物理学者と生物学者と密接に連携し、蛋白質の構造を量子論に基づくコンピュータ・シミュレーションで解析しました。その結果、水素イオンが蛋白質の生理的な構造と電子状態の相互作用により駆動される機構を解明しました。本研究には筑波大学学長賞が授与され、その研究結果は米化学会の権威ある雑誌(Journal of the American Chemical Society)及び日本生物物理学会誌50周年記念号に掲載されました

 兵庫県立大学の生命理学研究科における特任助教時代では、私は研究分野を化学分野まで拡げました。そこでは、有機合成反応を化学者と共に研究し、有機合成の原子レベルの反応機構を量子論に基づくコンピュータ・シミュレーションにより明らかにしました。更に、スイス連邦工科大学に短期研究留学し、計算物理学の方法論の研究も行いました

 筑波大学の数理物質系における助教時代では、私は研究分野を更にナノテクノロジー分野まで拡げました。ナノエレクトロニクス・デバイスでは半導体中の電子の挙動を利用します。従って、量子論に基づいて電子の挙動を理解する事が、次世代のナノエレクトロニクス・デバイス開発には必要不可欠で。例えば、新しいタイプのコンピュータ・メモリの開発は、省エネルギー化の観点から非常に注目されています。私は、スタンフォード大学の工学分野の研究者と共同で、量子論に基づくコンピュータ・シミュレーションにより、次世代メモリの動作機構における電子の役割を明らかにしました。本結果は国内外で非常に注目され、半導体分野のオリンピックと呼ばれる国際電子デバイス会議で採択され、時事通信社からの報道発表がなされました